元同僚たち酒宴の本来目的
・元同僚たちの酒盛りははじまりました。
滑り出しは平穏かつ上品に……近況などを順序よく手短に話、笑いに包まれておりました。
徐々に酒が全身に行き渡る頃、本来の性格が個々に表出し始めましてね、
場の雰囲気が激変し出したのです。
基本的には声の大きな人が目立つようになります。
しかし、今回は唯一の現役かつ女性のT川女史の澄んだソプラノが響き渡り出しましてね。
・会社の現状……つまり、ゴシップひっくるめての話です、興味あるのは!
売り上げとかそんなものはもはや関係なく、
人事構成や嫌だった面々のその後の情報、これが知りたいのです。
そして、冷や飯を食わされていたりするといっそう酒が進みご機嫌になる。
或いは、派閥争いですね。
A専務派とB常務派の争いは、常務が勝ち最近社長に就任したのは知っていたのですが、
敗れた系統のその後など、興味深いものです。
実際は明日から左遷なんてドラマのような筋書きはないのですが、徐々に進行するわけで、
そういったネタが格好の酒のつまみになります。
さらに、社内不倫ですね。
T川女史の部署の係長が支店の女性スタッフとできてしまっていた。
それが、不必要にその支店への出張が多いので不審に思い、上司が調べたところ不倫が発覚したという話です。
係長は、子供3人いて、奥さんが荷物まとめて実家に帰ってしまったとか……
さらに奥さんが支店に乗り込んでいき……とソプラノで語りかけるのです。
講談調にときに抑揚をつけ、お涙ちょうだいもあったりしてね。
まるで横に座って見ていたかのような臨場感!
なにもネタを持たない私は固唾をのんで聞き入るばかり。
まあ、相対的に人の不幸な話ほど自分の幸福度が増すという、人間の本質的な部分を垣間見ながら、
酒宴は進んでいったのですが……
人の不幸は蜜の味と言いますからね。ましてやその人が嫌いな人だったり、嫌な思いをさせられた人だったりすると格別です。
おっしゃる通りです。ただ、そう思う自分自身に嫌気がさすこともありますが、
人間の本能的なものかもしれません。別に宗教家ではなく聖ではないので……
タコポン