他人の空似
・ある日、バイト先の薬局でのことでした。
店主の婆さんが急用で外出したため、私は一人店番をしていたのです。 🙁
客はたまにしか来ませんので、椅子に座り商店街を見ておりました。
いろんな人が行き交っています。
すると、向かいの衣料品店と喫茶店の境に婆さんが一人立っていまして、
ずっとこちらを見ていることに気付きましてね。
店の中をのぞき込んでいるというよりは、私の顔をまじまじと……
むろんマスク着用でしたから、顔全体が分かるわけではありませんがね。
変な婆さんだと思いながら、にらみ返すわけにもいきませんから放っておいたのですがね。
・しばらくすると、こちらに近づいてきましてね。
店頭まで来たので、今店主は不在だと伝えると、
どうも目的は私の方だったみたいなのです。 🙄
いきなり、あんた帰ってきたんだねと、しみじみ……
なに? なんですか?
意味不明なので、どういう意味か問い返したのですがね。
その婆さんは、短気を起こしてはいけないよって……
それだけ言って去って行ったんですよ。
・何ですかね?
私を誰かと間違えたようなんだけど……としか思えません。 🙁
ということは、私に似た人がこの近辺に一人はいるということなのです。
そういう目線で記憶をたどったのですがね。
思い当たる節もあるのです。
ときどき通行人がこちらを見て、あれって感じで私を見ながら通り過ぎて行く……
どうも誰かと間違われていそうな気もしていました。
よくわかりませんけどね。