懐かしい人と再会

・多少体はフラつくものの、それをいいことにこのままじっと家に居ちゃダメだと思いましてね。

外を歩いてみることにしました。

妻は床に伏せっておりますが、私のような状態まで回復するには少し時間がかかりそうです。

ただ、私がモデルケースであり、いずれは回復するというストーリーが描けているためでしょうか、さほど緊迫感なり不安感はなさそうです。

差し当り何か食べないと体力が付きませんから、おかゆを作り漬物を添えてちゃぶ台に置いておきました。

・ところで、今年の春はどうもおかしいですよね。

この調子ですと桜の開花が当初予測よりずいぶん遅れてしまいそうです。

直前に冷え込む日々、これは桜はともかく私たち人間にも応えます。

まあ、それはそれとして一応久しく歩いていない商店街の方に行ってみました。

いいですね。

この人ごみとその周辺から発生する活気!

久々にエネルギーを貰い、生きているんだという実感がわいてきました。

・しばらくアーケードを歩いていますと、

かすかに私の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がしました。

はて?

ひょっとして、また元同僚S山さんの奥さん?

辺りを見回しても特にそのような方がいない……

気のせいかもと思いまして、歩き出すと、また女性の声が呼んでいます。

振り向くと……A婆さんじゃないか!

小柄でずいぶん腰が曲がってしまっているから、普通に振り向いても視界から外れていたのです。

私のすぐ後ろに立っておりました。

「元気そうじゃないか!」

そう声をかけると、「あんた、寝込んでいたんだろ。もういいのかい?」

どこからそんなレアな情報仕入れたのか不明ですが……久しぶりにお茶でも飲むことにしました。

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