孤独老人の悲哀を知る
・例の菊田老人とその家族のせいで、家の中が散乱状態の長谷宅です。
彼の口からいろいろ顛末を聞きましたが、いっこうに私をここに呼んだ理由を語りません。
いかにも緊急に頼みたいことがありげな話しぶりだったのですがね。
来てみるとまあ座ってくれと……そして、ほぼ途中から世間話でねえ。
私も明日早いからそろそろ帰りますよというと、
・まあそう言わずにお茶でもと、冷蔵庫からペットボトル出してきてコップに注いでくれる。
しばらく話していましたが、なんとなく私を呼んだ理由もわからんでもないんですよ。
そもそも彼は現在独り身で身内はすでに親族含め誰も居ない。
すなわち天涯孤独状態となってしまっている。
すると、平時はそれで特に何も思わないんだけれど、
先ほどの菊田家族の騒動のように家族がらみで大騒ぎしますと、
家族が心配して迎えにも来てくれるわけです。
・ひるがえって自分はどうなのか?
そうなのです。誰もいないのです。
暴れまくったところで心配してくれる人も甘える人もいない!
ということが意識の前面に出てくると、これはもう耐えがたいほどさみしい!
荒れ果てた家は明日にでも菊田氏側が直しますといっているのだけれど、
これも長谷氏側で何ら心配してくれる人すらいないのです。
散乱した家の中で一人ソファに座っていると、猛烈な孤独感が襲ってきて……
生きている意欲すらわいてこない。
これはひょっとしたら明日を待たずに命を絶ってしまいかねないと……
・そこで居ても立ってもいられず、誰かの声を聞きたい、そばにいてほしい!
で、私の事が思い浮かんだということのようです。
それだけ私も頼りにされているのか……残念ながらそうではないようでね。
他にいないから、私の顔が思い浮かんだだけのような雰囲気がありあり。
かなりがっかりしましたがね。
でも思い浮かんだだけでも、微々たる存在感は示せたって事なのか?
まあどうでもいい、しばらく世間話をして近いうちに酒でも飲もうという約束をして帰りました。

