シニア夫婦という特殊な形態
・所詮男と女は別の生き物と思いながら、気がつけばシニアという年代まで一緒に生きてきました。
若い頃はどうも考え方が合わない部分や、理解できない箇所も多々ありましてね。
本当に結婚して良かったのかどうかと考え込んだりもしました。
そもそも男女にかかわらず一人の人間が生まれ育った環境は異なるに決まっていますから、
形成される性格や常識、考え方は大なり小なり異なって当たり前です。
ですから、それが男女という性別によって違いが表出してきているのか、
人間であるが故のものなのか判別はかなり困難でした。
・そして、いちいち我を通していては、すぐに夫婦の危機が訪れてしまいます。
幾つ体があっても持ちませんから、余り深く追求しなくなりましてね。
衝突しても案外翌日になればリセットされていたりする。
若い頃は一晩一緒に寝ればなんとなくわかり合えるところもあったのですが、
そのうちに別にすべてをわかろうとしなくてもいいじゃないかという気持ちも芽生えました。
すると、ずいぶん気持ちも楽になり、許せなかったこともなんとなく心の中で放置できてきました。
そうして、気がつけばシニアです。
何十年も一緒にいますと、案外その道のりなんて忘れてしまっていたりもする。
一緒にいて当たり前なのです。
・この当たり前的感覚が精神の安定をもたらしましてね。
もはや体の付き合いなんてありませんが、一緒に暮らしているだけで生活の要素の一つとして成立しているのです。
もはや愛情とかそういった感情は消え去り、いや、そうなのかどうかすらよくわかりません。
でも、現に日常生活の一要素なのです、夫婦というのはね。
良いとか悪いとかそういうものでは無くなってしまっています。
熟年離婚とか、そういった言葉をよく聞くようになりましたが、
相手が抱えている心のストレスみたいなものを問うたこともありませんから、
あったとしても、もはやこのまま進行していくしかありません。
そのうちに私ども夫婦も熟年離婚ということになるのでしょうか……

