シニア夫婦における離婚の選択は……
・ということで、歳を取れば取るほどに妻の方に力が集中しましてね。
結局、口では歯が立たず私の勢いは弱まり、気がつけば実質的に妻の支配下にあるようなものなのです。
しかし、心の中では再び権力の座を取り戻す日を虎視眈々と……思ってはいるのですが、
もはや下降線を描く体力と頭脳、単純計算でもこれは妻の優位性は将来において開く一方。
であるならば、二者択一の判断となるわけです。
つまり、このまま下男として妻にお仕えするシニア人生と、
この先、袂を分かつのか……離婚ですがね。
・でもねえ、これは方法として頭の中で存在するだけですね、実際の生活を考えると離婚なんてあり得ません。
私の場合ですよ。
他人は知りません、フードコートで対面したかつての社の元役員の方々とかは、懐に黄金がたんまりとあるに決まってますがね。
そんな人はまあ何をしても一人で生きていけるでしょう。
しかし、大衆シニアの私は現時点でも年金だけでは生きていけず……。
逆に妻は、パン職人としてかろうじてではありますが一本立ちしているのです。
私はそのパン屋に寄生しているような形で、日々併設のカフェで細々とパンを買ったお客にコーヒーを提供している。
なので、上流の妻が作ったパンが干上がれば私も終わっちゃうわけですからね。
何でこうなってしまっているか……
つまり私には長期ビジョンが何にもないということなのです。
賢い人間であれば、本能的に上流を押さえにいってたはずです。
しかし、私にそういう発想はありませんでしたからねえ。
別に最初から妻と袂を分かつ気もありませんでしたが、こう優劣がはっきりしてきますとね、
なかなかつらいシニア人生でもあります。