婆さんを見舞う
・私が以前マンション管理人の仕事を短期にしていたとき、住人だったA婆さんです。
そのころから昼飯は二人で近くの大衆食堂に行っておりました。
その後私がクビになったあとも、付き合いは続いていましたが、
なにせ高齢で一人暮らしのため、最近グループホームに入ったのです。
同じ年代の方々で共同生活に近いようですが、もちろんスタッフの方もいていろんな面で安心です。
・遠縁の方がいろいろ汗をかいてくれたようですがね。
わたしも引っ越しの手伝いは多少しましたが、その後音沙汰ないのでどうしたのかと心配していました。
で、先日様子を見てきました。
この手の施設に行くのは初めてでしてね、勝手が分らなかったのですが……
恐る恐る入っていくと、スタッフの方が親切に対応して頂きましてね。
A婆は元気でした。
すっかりうち解けて、同年代の方が10人近くいらっしゃるようでしたが、
全員婆さんということです。
同年齢ばかりというのがみそのようでしてね、話が合うわけです。
普通に昔話をしても、何の違和感もなく通じてしまうわけでね、
それで嬉しくなってしまい際限なくおしゃべりが続く。
中には痴呆が進行している人もいるようですが、昔話はできるようです。
・しかし、ここに男性つまり爺さんが一人もいないというのは……
やはり、男は集団生活には馴染めないのでしょうか、孤独を求める生き物なのでしょうかね。
この根本的な部分を理解した上で、じゃあどうすべきかということを考えなければ、
爺さんの悲劇は増えていくのではないでしょうかね。
むろん爺さん(私も含めて)が一人で良いと思っているのであればそれでいいわけですが。
ところで、A婆は私のことは覚えていました。
施設に入る前、少し最近の記憶があやふやな部分がないとも言えなかったので、
心配していましたがひと安心です。
しかし……、面会は個室で二人だけだったのですが、
スタッフにこれは私の息子ですと紹介したのにはかなり不安を覚えましたが、
まあそれくらい良いか……。