昔好きだった娘と再会
・いとこですが、もうずいぶん会っていませんでした。
子供のころ恋心を抱いていて、ああいいなあなんて……
その女性と会う機会があったのですが、もう半世紀ぶりです。
当然姿形は昔のままであるはずがありません。
世の中の荒波を渡ってきた形跡が随所に見られ、その人の歴史を刻んでおりました。
ですから、昔のまだ世間を知らない保育器から出たばかりのような、
柔らかいふかふか感はもはや望むべくもありません。
・しかし、しかしです。
私がその娘を好きだったのは、瞬間見せる顔の優しげな表情だったり、
笑顔の瞬間、それに雰囲気です。
そして、そのような振る舞いは、ときどきまだ垣間見えるのです。
変わり果てた体型や心の中に形成された人間との戦いの跡は、
今となっては老人の醜さとして前面に出ているのですが、
ほんの一瞬昔のそういったしぐさなり表情は残っているのです。
それだけで心は昔に逆戻りしましてね、
ああこの婆さんのこんな所が好きだったんだと思った次第です。
思わず抱きしめたくなりましたが、これが男のいけないところかもしれません。
まだこの歳になってもエロ感が残っているのです。