失踪中の元同僚から便り
・あれからさらに数日過ぎましたが、特にS山さんの情報もなく……
そんなある日電話があり、すると発信元はS山さんの携帯になっています。
電源が切られていて繫がらなかったのですが、いつの間にか……
急いで出たのですが……
今旅の途中ということでした。
みんな心配していることを伝えたのですが、
今どこにいてこの先の予定をどうするのかは聞いても口を割りません。
ただ、誰にも言わずに黙っていてくれと言うのです。
しかし、みんな心配していて、警察に届けを出す段階までなっているからと説明したのですがね。
・黙っていてくれと言う一点張りでしてね。
でも、それは私の判断でどうするか決めるよと言いました。
声を聞いてしまった以上、心配している人たちがいる以上、
黙っているわけにはいかないでしょう。
いつ帰ってくるかも言いませんでしたしね。
この先、ずっとこのままでは大騒ぎになってしまいますから、
本人が現状と予定を語らないにしても、この瞬間生きていることは間違いないわけで……
ただ、事件性がなさそうなのでその点はほっとしたのですが、
生きてはいるけど余り明るい声ではなさそうでした。
ただただ誰にも言わないでくれと!
それで電話切ってしまったのですがね。
折り返し電話しても、出ませんでした。
私の対応は?
決まっています。
心配している人が多くいる、家族も友人も……
せめて今生きていて、事件性はなさそうだと(ここのところは確定するのは難しいんだけど)、心配している皆さんに連絡しておきました。