借金返済という心の負担を思う
・バイトも終わり妻より少し早く帰宅しました。
これはいつものことです。
妻は今パン作りの修行中ですから、職人の店主からいろいろ学んでいるところです。
店主はパン作りをもうやめてしまう予定のため、本来あまり開示したくないノウハウのようなものまで伝授してくれているようです。
その点有り難く、その分妻も真剣です。
・ところで、帰って来まして郵便受けを一応覗きますと、なにやら茶封筒が一つ入っておりました。
住所も名前も書かれていませんが、重要とだけ刻印のような形で記されているのです。
なんとなくこのような形式は以前にあった気もしますがね。
一応妻が帰ってくるまで待ち、二人で開けてみると……
なんと現金が入っていました。
中には走り書きがありましてね。
妻のかつての友人、女史Dでした。
むろん以前貸したお金の返済ということになります。
前回の半分程度の額ですがね。
しかし、郵便受けにそのまま入れて立ち去るとは大胆な……
ただ一応返済しようという意思は感じられたので、妻は何かを感じたのかも知れません。
・残りは気長に待とうかってね。
いうまでもなく、女史Dはかなりの年齢まで男を知らず独身で通していて、ホスト通いで別の世界を知ってしまった人です。
そして、ホストに入れあげてしまい、気が付けば借金まみれで……
見かねた妻の忠告も聞かず妻からも金を借り、
挙げ句の果てにホストとその幼子(娘)と同居生活!
そのうちに借金の取り立てに耐えきれず姿を消したのですが、
風の便りに、
案外その若いホストも真面目なところもあり、建設現場で働きながら3人仲良く暮らしているようです。
であればと、妻も私もしばらく静観するかと……特に最近ではバイトもしている関係で生活も今日明日の緊迫感はなく平穏です。
そのため女史Dのことは記憶から離れてたのですがね。
まあ、律儀なんですよ。
余計幸せになって欲しいと思う反面、貸した金はまだずいぶん残っているため早く返して欲しいなあと思う次第です。